レストラン「ブルーミンメドー」の誕生は、平成7年(1995)1月17日の阪神淡路大震災にさかのぼります。人々に癒し難い傷跡を残したあの大震災が無ければ、当館は今、存在さえしなかったと言っても過言ではありません。
ブランド名「ブルーミンメドー」と名付けた小社の独自造園工法「ワイルドフラワー緑花工法」の全国普及に野望を燃やしていた当時の私は、激務による疲労でこの夜も泥のように眠り込んでいました。
明け方、突き抜けるような激しい揺れに目覚めたと同時に、木造の旧社屋兼自宅はまたたく間に屋根も二階も天井も崩れ落ち、木端微塵に瓦解。一階にいた私も妻も生き埋めとなり、私は右手を骨折しながらも、辛くも瓦礫の山から生還することが出来ました。
会社業務も日常生活も何もかもこの日を境にストップし、廃墟に帰した被災跡地に、私は何日も茫然と立ちつくしていました。
「新社屋を立て直して、もう一度やり直そう」
漠然とそう考えていましたが、なかなか具体的なイメージに結びつきませんでした。
花と緑にマッチする、自然素材の建物。大工による手づくり。伝統的な工法で・・・。等々キーワードを重ね合わせ、遂にログハウスの姿が浮上しました。そして庭園には造園用の見本園とするため、かつて世界各地を見て歩き内心にイメージを決めていたイングリッシュ・ガーデンを、また一部の用地にはわが国古来の本格的な茶室と露地庭をつくることにしました。
震災に直面し、救済を求める直後の復興混乱期を目の当たりにした私は、かつて天高く野心を燃やしていた当時とは打って変わり、中小企業こそは地元社会、近隣住民と共に歩むべきだと痛感しました。地域の人達にも喜んでもらえる、憩いと安らぎの店舗空間をつくろうと心に決めました。
そして兵庫県からの多額の緊急震災復興融資を活用して、何とか着工にこぎつけたものの、途中数々の難題に遭遇し、結局建物の建築に三年、その後造園に二年の、完成まで計五年間を費やす結果となりました。本当に難産の末の誕生です。
カナダ本国から直輸入した、大胆な丸太組みのカナディアン・ログハウス、欧米の著名庭園をモチーフに作庭したイングリッシュ・ガーデン、そして茶室や露地庭の組み合わせは意外だと驚かれますが、実は〝癒し″というキーワードで古今東西の伝統様式が結ばれていると考えます。
そして開業二年後、婚礼事業に進出し、強く自覚した重要なメッセージが次のようなものです。
大震災は、地元のここ本山中町でも多くの住民の命を奪い、町はほとんど壊滅状態となりました。わが身を焼いて蘇生するという伝説のフェニックス(不死鳥)のように、その後、町は再生と復興を果たし、活力を取り戻しつつあります。
ブルーミンメドーにて新しい人生の門出を迎え、祝福されてここから出発なされるお二人には、地域住民の方々が力いっぱいの声援と、大きな拍手を送っておられます。それは、この地から若い、新しい命が生まれ育って欲しいと願う、私自身や地域の方々の熱くて切実な思いであり、祈りなのです。
ブライダルはまさに「新生」のシンボリックな瞬間です。
お二人の門出を心から祝福申し上げます。
株式会社 渡辺農園 代表取締役
技術士(総合技術監理部門、建設部門建設環境)
ひょうごガーデンマイスター
渡辺 拓也